子犬物語 16
黒い犬は、駆け出した事に気づき、すぐに追って来た!
無我夢中で走った。
しかし、ゴミ置場に辿り着く直前で追いつかれてしまった。
その黒い犬は、僕の足目掛けて飛び掛って来た・・・・
「ガルルル・・・・」
あっ!!
足を噛まれた!!!
・・・と思った。
しかし、運よくズボンの裾を噛まれただけだった。
しかも、そのズボンの裾を、ずっと離さないでいる。
鬼のように顔に皺をよせて、狂わんばかりにズボンの裾を咥えたまま顔を上下させている。
コロは僕の胸にしがみついている。
しかし、本能のとおり、下方の犬に向かって吠えるのは忘れていない。
緊迫した時間が過ぎた。
ほんの数秒だったと思う、しかし、とても長く感じた。
ホウキのある場所までは、あと3メートルほどだ。
だが、木が邪魔をして見えない。
「本当にあるだろうか・・・、頼むからあってくれ!」
僕は強引に振りほどいた。
その時、一瞬その犬は「ガルルル・・・」と威嚇した。
その一瞬をついて、僕は木の裏側まで走った。
「あった!」
ホウキがあった・・・・
一秒とかからぬ間に、すかさず、そのホウキを取り、そして、振り向きざまに、その犬の顔目掛けて振り下ろした。
「バシッッ!!!」
犬は一瞬、怯んだように見えた・・・・
しかし、次の瞬間、さっきの倍くらいの大きな声で威嚇しながら突進して来た!
「危ない・・・」
僕は無我夢中で、その手に持っているホウキを、もう一度振り下ろした。
さっきと同じ強さでは効果がないと思ったのだろう。突発的に、かなり強く叩いたと思う・・・・
ホウキは二つに折れてしまった。
つづく・・・・