子犬物語 20


コロは、鎖でぐるぐる巻きになって死んでいた・・・・

「なんで、こんな事になってしまったんだ!」

涙が、止めどもなく溢れた。





その晩、コロを部屋に入れ、一晩を過ごした。



コロの思い出が、何度も何度も蘇ってくる。



動物管理所で、初めてコロに出会った眩しい日差しの日の事。
小さいけれども、とても元気が良かった。

なかなかドッグフードを食べなくて大変だった日々。
ちょっと叱っただけで、すぐにおしっこをしていた小心なコロ。
にわとりに危害を与えてしまい、困った時の事。
大きな犬と格闘した時の事。

沢山の事が蘇った。
あまりに沢山の事が・・・



コロは、動かない。

死んでしまったなんて、ぜんぜん思えないけど・・・
昨日とは違う。
コロは、動かない。
何度もコロの名を呼んだけれども・・・



一夜明けた。
結局、一睡も出来なかった・・・・
無力感だけが、自分の体を支えている。
廃人のようだ。



近所の人に、話を聞いた。
雷が鳴っていた時、ずっとコロの鳴き声が聞こえたそうだ。
「きっと、怖くて、ずっと泣いていたんだ・・・」

そして、雷が収まった頃は、泣き止んでいたという。




その時は、何時だったんだろうか。
僕は、その時何をしていた時だったんだろうか。
何度悔やんでも、時間は戻って来ない。




コロは、鎖を身体と首に巻きつけていた。

予想出来る事は・・・
雷が嫌いなコロ・・・きっと、雷が鳴ってパニックになったのだろう。
そして、泣きながら訴えたに違いない。
怖さのあまり、何度も身体を回転させ、
足に絡ませ、
胴体に絡ませ、
首に絡ませてしまった・・・・


そして、無我夢中で、暴れて、
首を絞めて死んでしまったんだ。






こんな事って、あるだろうか。

コロは、もう15年間も生きたんだ。
とても年老いていたんだ。
そして、とても弱っていたんだ・・・・

普通だったら、老衰で死んだのではなかったか。
それなのに、こんな死に方ってあるかよ・・・・・

怖い思いをして、動物管理場に居たコロ。
最後も、雷で怖い思いをして死んだ。




あれは、とても暑い夏の日だった。
あれから、ちょうど2年が経った。





「完」

                      

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