アメリカワシントン州、シアトルにあるピュジェット湾は、その日、静かな朝を迎えていた。
 
6時、キャサリン・エリオットは、いつものように、ピュジェット湾をジョギングして、自宅に戻りシャワーを浴びて、朝食を済ませ、そして、マーカス・ホリー病院へ出勤した。
冬のシアトルの朝はとても寒い。
しかし、どんなに寒くても、彼女は朝のジョギングを欠かさなかった。
 

キャサリン・エリオットは現在22才、ワシントン州の州立ハイスクールを卒業後、看護学校、インターンを経て、看護師免許を取得し、ここマーカス・ホリー病院に派遣された。
身長は169cm、髪はブロンド、性格は真面目で、看護師としてふさわしく、とても正義感強い性格だった。
趣味は野球観戦。
地元シアトルのマリナーズの大ファンだった。
 
キャサリンは、今日もいつものように、外科ナースステーションに入り、そして、担当の病室を回り、それぞれの患者の状態を診ていた。
担当する病室の患者は皆、昨日と状態も変らず、キャサリンはまず安心した。

 

「ふう・・・、今日も病室は平静みたいね。良かった・・・。」

キャサリンは、小さくため息をつきながら言った。

毎日診ている患者達は、キャサリンにとって、大好きな友達だった。
その大好きな友達の一人でも病状が悪化すると、キャサリンは家に帰っても、プライベートの時間を過ごしていても、いつも心配で仕方がなかった。
 



キャサリンには、今、1年付き合っているボーイフレンドが居た。
彼は3つ年上の25才。
身長は180cmと長身。とてもハンサムで、女性にも人気があった。
だが彼は、シアトル一の貿易商の家の一人息子で、お金にはいつも不自由なく育った為、時としてわがままな性格でもあった。



 
「キャサリン、おはよう!」

ある日、ボーイフレンドのトム・スピッツが、キャサリンの家へ自慢の愛車BMWで迎えに来た。
「ハーイ、トム! 今日は天気がよくて良かったわ。絶好のドライブ日和ね!」
そう、キャサリンが言うと、トムが答えた。
「よし、今日は海岸線をドライブしよう! とっても綺麗な景色の場所を知っているから、ずっと前からそこへキャサリンを連れて行きたいと思っていたんだ。」
「ほんと?嬉しいわ。」
「よし、じゃ、行こう!」
ふたりは、その日のデートの始まりに浮き浮きしていた。
 
シアトルの街からルート99に乗り、途中、セカンド・アベニューSWから西へ走り、海岸線に出て、ローマン・ビーチ・パークに着いた。
冬のシアトルは、風がとても冷たかった。
 
「さあ、着いた!」
トムが、助手席に座っているキャサリンに向かって言った。
「ふーぅ、景色がとても綺麗ね!」
キャサリンは、トムの言葉とほぼ同時に言った。
二人は車のドアを開けて、外に出た。
車の中から見えた景色よりも、更に広い景色がその前にあった。
 
冷たい風が、二人の頬を撫でる・・・。

「ふー、寒い・・・。」

キャサリンが、トムに思わず抱きついた。
トムはキャサリンの頬を両手で包んだ。
「温かい・・・。」
キャサリンは、目を瞑って言った。
「そうだよ。僕は君を温める為に生まれて来たんだもの・・・。」
トムも、そう言いながら目を瞑った。
二人は、しばらくの間目を瞑り、抱擁に慕っていた。
 
 キャサリンは、この二人だけの時間に幸せを感じていた。
「ああ、私は、なんて幸せなの・・・。」
と、心に思った。
しかし、看護師であるキャサリンにとって、幸せだと思えば思うほど、これとは全く別世界の病室での事を思い出してしまう。

「トム、ちょっと待ってて・・・。」
キャサリンは、そう言うと、公園の中にある公衆電話に向かった。
公衆電話から、マーカス・ホリー病院外科ナースセンターの直通ダイヤルを回した。
「プルルル・・・・。」

「はい、こちらマーカス・ホリー病院外科ナースセンターです。」
「あの、看護師のキャサリン・エリオットですが、病室の方は異常ないでしょうか・・・?」
キャサリンが、そういうと。
「ああ、キャサリン!今大変な事が起きてるのよ!すぐに来て頂戴!!」
電話の声は、ナースセンターの看護師長だった。

えっ、一体、何が起きたんですか?」
キャサリンがそう言うと、看護師長は、更に声を大きくして言った。



「とにかく、一刻も早く来て頂戴!!!」

 

 

               

 

 

 

 

 

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