子犬物語 19
8月の暑いある日、
その日は、朝から日差しが強く、とても暑かった。
その日、コロは朝ご飯の時、あまり食べなかった。
やはり、この暑さでバテてしまっているのだろう。
それなのに、僕を見るなりしっぽを振ってくれた。
目はずっと僕の顔を見上げている。
純粋な目だ・・・
その日、朝から自宅の教室で授業があって、夕方から東京都東村山市にある音楽教室に講師で出掛けた。
家を車で出る時、フロントガラスから遠ざかって行くコロの姿を見た。
いつもと変わらない。
コロに手を振った。
「行ってくるよ。」
音楽教室に行く途中、ちょっとにわか雨が降った。
「これで、コロは少しは涼しくなるかな・・・」
なんて思いながら、ちょっと微笑んだ。
教室に着き、授業を始めた。
そして、夜になった。
窓の外を見ると、木がなびいている。
風が出てきたようだ。
授業を進めた。
風が吹き始めてから10分くらい経っただっただろうか、
窓に当たる雨の音が聞こえだした。
「だいぶ雲行きが怪しくなって来たね。」と生徒と話した・・・
風と雨はますます激しくなって来た。
窓の外は、洪水のようになっている。
「これはひどい雨だなあ・・・」
その時、ピカッと稲妻が走った!
そして、「あっ、雷だ・・・」と思ったとほぼ同時に、バリバリバリ!!!という地響きがするくらい凄く大きな音が鳴った。
授業が終わり、僕はひとりで窓の外を見ていた。
「雨が、もう少しおさまってから帰ろうか・・・」
やがて雨も小降りになった。
車を走らせ、家路についた。
家に着いた僕は、玄関のドアを開け、電気をつけた。
電気に照らされた庭の植木は、あの酷い風と雨で荒れていた。
「家の方も、かなり強く降ったんだなぁ・・・・」
そう思い、庭を見渡した。
そして、コロの小屋のところに目をやった途端、いつもと違う光景を目にした。
コロの身体に、繋いである鎖がグルグル巻きになっている。
「どうしたんだ・・・・」
思わず、抱きかかえた。
コロは死んでいた。
つづく・・・・